木曜日にはココアを (青山美智子)

小説

こんなにほっこりする小説があるんだなぁ…何か問題を解決するわけではなく、ましてや犯人が捕まるようなこともない。いくつかの物語の一つ一つが小さなエピソードで、少しずつ絡み合っている。

一つの居心地の良さそうなお店がスタートとなって、小さな恋の物語が始まる。でも、大恋愛が書かれた小説ではない。お店を訪れる人の小さなエピソードやその人の変化、そのきっかけ、いろんな不思議がそこにはある。そして、話題はオーストラリアへ飛び火して、同じ場面に登場する相手の物語に変わる。どこかでちょっと触れ合ったものが次の物語の中で花開くような物語がいくつかある。

そうやっていろいろなところを回ってまた小さな喫茶店に戻ってくると「ココア」が注文されるのだ。同じココアでありながら違うココアのように。本人たちは知らない二人の間にたくさんの物語があると思うと、実際の世界ももしかしてそうなのかなぁと思えてくる。

一つ一つの物語にほっこりしながら読み進め、最後まで読み終わった時にこんなに温かく満ち足りた気持ちになれる良い小説だった。そして、話は続編である月曜日へと続いていく…。

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