ロマンシェ

小説

 また、小説の新しい扉を開けたのかもしれない…。読み始めたときのなんとも言えない気持ち悪さと言うか、僕が読んでいいのだろうかと考えてしまうキャピキャピ感がいっぱいだった。

 女性らしさを持つ主人公が、同級生への恋心を抱きながらパリでハチャメチャな出来事に遭遇していく…。いつの間にか、はまっている自分がいるではないか。芸術家である主人公と、物語に登場する小説家の関係が深まっていくことで話の面白味も深まる。小説家とは、自分で自分好みの物語がつくれることに、嫉妬してしまう。僕も自分の物語を書いてみたいし、物語を書くように現実の自分も生きたいと、物語と現実を行き来しながら読み進めていく。

 そして、解説まで含めた全部を読み終えたとき、物語がいつの間にか現実とリンクしていた理由がわかった。とんでもなくファンタジーな部分と、現実の世界を繋げてしまうのは、小説家の領域を越えている。

 読み終えるのを、もったいないと最後の20ページくらいを後回しにした僕の選択は正しかったのかもしれない。物語をしっかり味わった上で、リアルとの繋がりを知ったのは二度おいしい。もし、今、美術館での展示まで見れたなら、三度美味しいのだが、そこまでうまくはいかないものだ。

 さて、これを読んだあの人はどう感じるのか…そんなことを考えることでちゃんと三度美味しいのだ。

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