物語のおわり

小説

 湊かなえの小説は半分くらい読まないと短編集か同じ話なのかわからない。

 僕は彼女のそんな小説が好きだ。購入してから、私生活の中で色々あってなかなか手に取ることができなかった。ひとつの小説でありながら、いくつもの物語があり、それがひとつの物語を通してリレーされていく。そんな物語の最後にはちゃんとパーツが重なってひとつの音楽を奏でるようだ。今回も期待を裏切らない作品だった。
 
 僕の私生活もたくさんの人達がそれぞれの主役を演じながら、バトンを繋いで社会を築いているのかもしれない。小説も中に、不登校になった孫娘が登場する。物語を読み違えながら、自分を主人公にして考えた時と、相手を主人公にして考えたときで、発せられる言葉は変わる。果たして今の僕はどちらなんだろうか。存在を消しながら生活をする孫娘に、教師である祖父の言葉は厳しい。どちらの思いもわかる。どちらも主人公であり、登場人物である。
 
 さて、小説には最後のページがあるが、僕の人生はまだまだ道半ば。最後に読み違えをしたことが、物語も面白さを深めてほしいと思うのであった。

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