ビフォア・ラン

小説

 四十回のまばたきを読んだ解説に、重松清の最初の小説がビフォア・ランだということを知った。そこで早速、購入をしたのである。重松清のまさに原点だと思う。なぜ僕は重松作品が好きなのかと言われたとき、この青春小説が好きなんだと思った。ちょっと古くさい昭和の臭いで、こういう青春時代とは違う生活をしてきたのに、登場人物の気持ちがなんとなく理解できるのはなぜだろう。

 今回のビフォア・ランは高校3年生の卒業までの物語。自分達が勝手に作ったトラウマが、真実に重なっていき、切ない卒業を迎える。まさに小説のなかで嘘と真実が重なりあいながら、どっかで嘘が真実に真実が実は自分のなかの嘘な部分になる。これが、重松青春小説の自分が感じてきたものと重なる。そうだったんだ、ビフォア・ランみたいなことを、いつも重松小説でしていたんだ。

 もちろん自分は真面目が取り柄な高校時代を送ってきた。でも、それが本当の自分かどうかは今になっても答えはでない。こんなに青春時代だったらと思いながら、事実を嘘に変えているのかもしれない。

 読みながら推理小説のように先を急ぎたくなるわけではない。恋愛小説みたいにドキドキするわけでもない。自分の高校時代と比べながら、ちょっぴり切なく、懐かしい感じがするのである。

 小説の中の彼らはその後どんな人生を送っているのだろう。そう考えながら、本を閉じる、どうやら僕はそんな小説が好きらしい。

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