ザリガニの鳴くところ (ディーリア・オーエンズ)

小説

 夏の読書にはちょうど良い。ちょっと厚めの翻訳小説だった。2021年の本屋大賞翻訳小説部門第1位である。誰かに紹介されたが、その時には手に取ることもなく、図書館で出会ったので借りたのだ。それも何冊か借りたうちの一冊で…結果的には、一番読むのに時間をかけてしまった。

 二つの物語が並行して進んでいき、一つに交わる。こういう形式の小説は、最初読んでいても意味が分からないのだが、段々と重なりあうところが出てくると一気に面白くなる。今回もまさにそうであった。「湿地で一人の青年が死んでいた」ことと「湿地の中で虐待や偏見に耐えながら生き抜いた少女」の話が、並行してスタートしていくのだ。最初はどういう展開をしてくのか、その流れがつかめてくるまでは、助走のようで読むのに時間がかかる。ところが勢いがつけば、どんどん先が気になるというのが小説の面白いところだ。

 虐待され偏見にさらされた湿地の少女が、ある少年との出会いをきっかけに、学問に目覚め、自然の中で身に着けた知識や観察力が社会とつながり始める。そんなきっかけを与えた少年も一度は彼女の元を離れていくことが、この物語を作っていく。そして、途中にいくつかの詩によって表現された状況や情景、心情が物語に深みを与える。そして、物語の最後にいくつかの謎が解き明かされていくことで、少女が生きてきた人生がいかに偉大であり謎多きものであったのかを感じることができた。そして、途中を一気に読んできたのにもかかわらず、残りページが少なくなるごとに、一節ずつ時間を置きながら読みたくなるのも、不思議なものだ。今回も、ところどころで立ち止まりながら、小説を楽しむことができた。

 自然の中に生まれた物語であり、教育の可能性を感がる物語であり、ミステリー小説であり、文学的な小説である。そこには明確な分類の差があるのかはわからないが、この小説はいくつかの楽しみがあることを教えてくれた。ただ、私には文学的な部分への興味が乏しく、特にところどころに出てくる詩は文字をなぞるだけであったのだが…。

 読み終えて、「あぁ、また本が読みなたいなぁ」こういう気持ちを味わいたいなぁと図書館に行って本を借りてきたのだった。

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