共感の正体 つながりを生むのか、苦しみをもたらすのか (山竹伸二)

哲学

 図書館のいつもの書架を歩いていると、ふと目に留まった一冊である。共感…すごく興味があるので、手に取った。しかし、この「共感」というのを哲学的に見ていくとなると、なかなか難しいものである。先人たちの共感に対する考え方や、共感がどのように生まれるか、動物ではどうか、哲学では…ということが、引用されながら紹介される。読み進めるのに時間がかかる。ところが、ケアについてのことの中で、共感について書かれた部分になると、ぐっと身近に感じるのだ。まさに、考え方に共感できたのだろう。共感された経験から、自己理解が進み、そして他者を理解することができる。その経験や過程は、それだけで自己を癒すことともなる。なのでカウンセラーは、相手の苦しみを共感し、共感されたことから、自分を客観的に理解して、苦しみから解放されたり癒されたりするわけだ。なんだか、すーーーっと、自分に染み込む。

 そして、おわりにの最初の一文が「共感はとても疲れる。」から始まる。これもやっぱり納得できる。共感する力があるからこそ、仲間や文化を築いてきたのだろうが…やっぱり、誰かに振り回されてしまうことは疲れるのだ。だからといって「共感に頼らないのではなく、共感のデメリットを減らし、よりよい形で共感を活かせるようにすることなのだ。」というところに、またまた共感する。人の心がわかるようになりなさい、と言われてきたが、そのことで自分がどんどんつらい思いをしてしまっては意味がないのであり、そういう気持ちを理解しながら自分自身はしっかりと自分であり続ける必要があるのだ。そして、言葉がわからない子どもたち、赤ちゃんでさえ、共感を通じて成長をしていく。そういう経験を積みながら、人として成長するということがよくわかった。

 さてさて、物語のようには、入ってこない内容ではあったが最後まで読み切って達成感を感じる。哲学書ほど、回りくどくもないし、専門書ほど専門用語が多用されているわけでもない。それでいて、なんとなく共感について共感しながら読める本であった。

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