風神雷神(原田マハ)

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一枚の絵がある。その絵を見て、何を思うのだろうか。私は、いろいろな美術館に行って、有名な絵画を見ても…つい素通りしてしまう。絵画や芸術というのに、あまり興味がないのである。自分自身それがとても残念。

しかし、今回も原田マハの物語には魅せられてしまった。たった一枚の屏風画(一対なので2枚か)を見てこれだけの物語にしてしまうのは本当にすごい。俵屋宗達の描いた風神雷神。作者の俵屋宗達についてはその経歴も定かではない。そんな一人の絵師を見つけてきて、物語を書いてしまうことに驚く。今回の小説はハードカバーの上下巻でトータル700ページ近い大作であった。

読み始めると、頭の中に情景が浮かぶ。フィクションなのに本当の史実のように、物語が展開されていく。昨年までNHKの大河ドラマで放映されていた「どうする家康」で、織田信長のことも取り上げられていたので、なんとなくそのイメージと重ね合わせながら読んでいく。

天正遣欧少年使節は史実である。その史実の中にあたかもいたかのように俵屋宗達が登場して一緒に旅をしていく。織田信長にその名を頂戴したというのも原田マハの空想であるが、その情景が生き生きと描かれており、一人一人の感情が動くところや芸術品に向き合うシーンは読んでいて、うらやましくもなるくらいである。

やっぱり原田マハはすごいなぁと思わされた。私も一つの絵や芸術品を見て、その向こうに自分だけの物語を持ているようになりたいと心から思えた小説であった。

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