まず牛を球とします。(柞刈湯葉 いすかりゆば)

小説

すごい題名の本だ…。そして、あとがきまで読んで作者が女性だと知る。SF小説の短編集であるが、その領域はかなり広い。歴史的なことにSFが混ざるのは、僕はとても読みやすかったし、状況を思い浮かべながら読むことができる。ところが、「まずは牛を球とします。」というような内容になると、SFすぎて読みながらこういう思考をする人がいるのかと、SF物語の中に現代の倫理観が織り交ぜられていることの、落ち着きのなさをすごく感じる物語であった。想像は自由だし、もしかすると何もないところでクスっと笑っているひとは、こういうことを考えているのかもしれないと思ったくらいだ。

誰かと話していて「面白い本を紹介して」と聞くことがある。紹介してもらったらとりあえず読んでみるが…今回は感想を伝えづらい。僕はそもそもがSFはあまり好まない。自分を物語の登場人物に重ねながら情景を浮かべて読みたいタイプで、突拍子もないSFだとそういうことができない。

今回の小説はすべてSFではあるものの、「収録作解題」を読んでみて、「そういうことだったのか」と改めて考えられる物語もあった。参考文献なんかが載っているような短編はわりと受け入れやすい内容だった。一方で著者が「私はこういうことを子どものころから考えていました」みたいのには「えっ???」という驚きがあった。

さらに、「ボーナストラック」として書かれたひと作品に著者の想像力の階層が何となく見えてくる。

たまには(と打つと「球には」と変換されたが、私は「まず牛(うし)を球(たま)とします」と読んでいたが、球(きゅう)である。「まずはぎゅうをきゅうとします。」なんかヘンテコ。)こういう小説も面白かったな。読むのにはすごく時間がかかったけれど…笑

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