群衆心理 (ギュスターヴ・ル・ボン著 櫻井成夫訳)

心理学

NHKの100分で名著をよく見る。今回は群衆心理を見て、番組内でも番組だけではなく本を読み直してほしいといっていたので(だったのかはすでに覚えていないが…)、図書館で借りてきた。他言語の文章を日本語に訳すというのはとても難しいと思う。本を読んでいても右から左に文字は流れていくものの内容が一向に入ってこない。自分が情けなくなるばかりである。それでも悔しいから最後まで文字を追う。そうやってなんとか最後まで読み終えた。

全く内容が頭に入っていないので、読み終わってもう一度、100分で名著のビデオを見直す。そうすると本の中の内容がかなり削り取られて紹介されていることに気づく。基本的には群衆をあおるための内容の部分がクローズアップされ、ヒトラーやトランプがいかに群衆に働きかけたかがテーマとなっている。

どうにも読みずらいと思っていたら、文庫本の初版こそ1993年であるが、底本となる櫻井が翻訳したのは昭和27年ということである。そして、そもそもの原本も回りくどい表現をされた本だったと知る…。そういう本なのでか?私の能力が低いからはやっぱり最後に記憶に残るのは、100分に名著で紹介された部分だけになってしまうのが残念な話である。

群衆にはわかりやすく「断言」しそれを何度も「反復」することで「感染」するかのように広がっていく。さらには群衆となったのちは個々人の能力などはあまり意味をなさず、その思想に飲み込まれてしまう。自分も群衆の一人であることを明言し、短い言葉で断言することは、ヒトラーの演説を見ていると確かによくわかる。そして、それに対抗するには教育が大切であり、知識詰込み型の教育ではなく、自分が考えて行動するような職業教育が必要だとしている。判断力、経験、創意、気概などが人生における成功の条件であって、教科書の中でそれらを学ぶのではない。これは、現代的な教育の諸問題解決のために考えられてきた方法をこの時代に提言しているとも考えられる。

「群衆心理」が掛かれたのは1895年ということで100年以上も前の本である。そして、著者は医師であり心理学者であり、物理学者であった。多くのことに興味を持ち自らがフィールドワークによって学び続けたその姿勢を知ることができただけれでも、今回の本を手に取った意味があったのだと思う。

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