絶唱

小説

 小説とは読みだせば、時間を忘れて読んでしまうもの。そういう感覚がとてもいい。さて、今回は湊かなえの小説である。1人の登場人物によって4つの物語が一つの物語に繋がる。短編であり、長編である。このドキドキ感がとても好きだ。

 今回は阪神大震災とトンガの二つのキーワードで繰り広げられていく物語。著者自身がトンガで海外青年協力隊に参加した家庭科教師であることから、フィクションなのかノンフィクションなのかと考える。きっとノンフィクションをフィクションにして伝えたかった思いがあるのだろう。

 読者の勝手な想像として、誰しも心の中にそのままでは伝えられないけれど、他の表現で伝えたい話したい(離したい)思いがあると思う。そういう思いが登場人物に載せられて物語として伝えられるんじゃないだろうか。

 災害は突然やってくる。そして、望まずとも多くの物語を残す。阪神大震災の朝、テレビで見た光景を思い出す。その日にしていたことが記憶に浮かぶ。これも境界線の外にいたから、語ることができることなんだろう。

 あぁ、湊かなえはやっぱり物語を作るのがうまいなぁと改めて思うし、読み終わった後の言い表せない感覚がとても心地よい。言い表せないから、紹介するときには「読んでみて」としか言えない。

 あまり解説に期待しない僕だけど、今回の小説は解説を読んで答えを知りたいと思える物語でした。

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