聖なる怪物たち

小説

 二冊続けて医者を主人公とした話しだ。前回の本を紹介してくれた人が貸してくれた。医療系の話が好きなんだろう。今回は医療ミス?を犯した医者とその周りで多くの人たちの思惑が重なりあって一つの事件をつくりあげる。

 子どもは誰の子で、母はなぜ死んだのか…一人一人の登場人物か、それぞれの思いを持ち、嘘を重ねる。重なった嘘は大きな事実と絡み合って、正義や倫理を越えていく。誰もが自分の中にあるものと向かい合い、誰もが自分自身を欺きながらこの先にもストーリーは続いていくのかもしれない。

 「なぜ、あの時に…」という思いは誰しもが持つものである。そして、その思いはその先の人生で何度も思い出されては自分を苦しめる。小説のなかで生まれてきた赤ちゃんは、なにも知らず、しかし、両親に常にそんな思いを抱かせながら育っていくのであろう。嘘から生まれた生と死によって、この物語は最後までハラハラとさせてくれた。医師の倫理や人の道徳を嘲笑うような小説だった。

 さて、最後に、もう一人の看護師は、「なぜ、あの時に…」にどう向きあっといるかを想像してしまった。読みながら、自分も医者になったならと、妄想するだけはタダである。

コメント

タイトルとURLをコピーしました