白鳥とコウモリ(東野圭吾)

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久しぶりの東野圭吾なのかなぁ。新聞広告に大きく取り上げられているのを見て図書館で検索してみると…思った以上に分厚い小説が出てきた。一瞬、これ読むのにどれくらいかかるだろうか…と躊躇したくらいだ。ところが読み始めると先が気になる…ゴールデンウィーク中に難なく読み終えてしまった。

さて、読み終えてなぜ「白鳥とコウモリ」何だろうかと思う。物語は車の中で発見された刺殺体が発見された捜査から始まるミステリー。東京で行った一つの殺人事件の捜査が愛知県にまでおよびわりとスムーズに解決に向かっていくのである。でも、犯人が分かって逮捕されたところで、この分厚い小説は3分の1ほどしか進んでいない。では、ここからどういう展開になるのだろうかと考えながらページをめくる。

殺害された被害者と、殺害を供述する加害者の語られる人物像に疑問を持ったのがどちらも子どもたちである。自分の知っている父親と警察から語られる被害者像や犯人像に違和感を覚えたそれぞれの子どもがその疑問に向き合いながら事件の真相を明らかにしていく。

個人的には途中で出てきた別のばらばら殺人事件が大きく関与するのでは?と思いながら読み進めることができた。そして、それぞれの家族と構成する個人の関係が角度を変えながら、家族としての責任や世間との向き合い方を考えさせられながら、物語は先へ進んでいく。

一つ一つの章がわりと短くまとめられているので、ゴールデンウィークの我が家のイベントの合間に読んでは閉じを繰り返すことができた。それもこの作品を読み進めることができた理由だと思う。

もう一つ、東京で起こった殺人事件でありながら、過去に愛知県で起こった殺人事件が物語を複雑にするとともに、新たなる問題提起がなされている。愛知県に移動して、岡崎や安城、常滑や名古屋、豊橋と自分の身近な町の名前が出てくることもなんか親近感が感じられたし、新幹線で行くならのぞみやこだま以外の方法だってあるのにと、どうでもよいことを考えながら読むことができた。

一つの過ちが、時を超えて新たなる事件を起こし、当事者だけではなく家族が状況を変えながら事件に関わりあっていく。ミステリーが紐解かれていく中で、分厚い一冊にちりばめられたヒントが繋がっていくこととなる。どうやったらこういう小説が書けるのだろうか。マインドマップみたいなものを使って構成を考えたうえで、それぞれの場面に肉付けをしていくのだろうか…。心を揺さぶられながら、恋心を感じながら、一つの物語としてまとめる東野圭吾の小説を最後まで楽しむことができた。

連休のほとんどは子どもの用事にお付き合いでしたが、合間合間に小説読めてなんとなく充実した気分になれたので、良しとしよう。この読書記録を書きながら調べてみると、私が読んだのは523ページのハードカバーであるが、文庫版が発売されている。文庫版発売の新聞広告を見たんだろうなぁと自分の中で納得。なんとなくいろいろな地名の中で、頭に浮かぶ光景があったので読みやすい小説だった。

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