きよしこ

小説

 本を紹介してほしいと言われた。そんな時に、紹介するならこの本だと思っていた本がある。「きよしこ」だ。重松清が、吃音のある少年の母から励ましの手紙を書いてほしいと頼まれて、手紙ではなく小説を書いた。

 僕は吃音ではない。でも、小学校のころから自分の中に、恥ずかしいと思うところがあった。そんな僕が大人になって、「きよしこ」と出会った。その時の何とも言えない思い。自分の欠点を抱えて成長していく少年の気持ちにとても励まされた…ような気がする。

 なぜ、気がするなのか…それは具体的な内容はあまり覚えていない。そんな時にこのブログに頼ればよいと思っていた、ところがブログに記録もない。

 記憶をたどるよりも、もう一度読むことにした。きっと前とは僕の置かれている状況や心境が違うのだろう。思っていたほど、励まされるような小説ではなかった。でも、そうだよな、そうだよなって相槌を打ちながら読んでいる僕がいる。

 吃音の少年は、自分の思いを伝える言葉を発することで恥ずかしい思いをするのを避けて生きてきた。そんな少年が、心の中ではすらすらとしゃべれる。こうやって重松清は生まれたんだな。

 転校を繰り返しながら、たくさんの仲間に会うが、一つ一つのエピソードは自分の中で覚えておかないと、ずーっと一緒に過ごした仲間はいない。恥ずかしくて、どもる言葉から逃げてきた少年が、父親の言葉で自分の思いを伝える。それを応援する彼女の存在と別れ。あぁなんと切ない。

 二度目に読んで、やっぱりこの本を紹介しようと思った。

 人はそれぞれ自分の何かに劣等感を持ち、それを乗り越えようとしながらもだえ苦しんで成長する。そして、できなかったことを別の形で表現できた時に、それがちょっとだけどうでもよくなるんだと思う。つらいけど、苦しいけど、全部ひっくるめてバランスなんだよなぁ。

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