めだか、太平洋を往け (重松清)

小説

 図書館で見つけた本です。久しぶりの重松清。なんだか、重松清の小説が読みたくなる時があるんですよね。今回は題名を見て…なんかしっくりこなかったんです。どんな物語なんだろうって…。

 重松さんの小説は本当に重松らしいです。あぁこの言い回し、この天の声のような状況説明が重松清だなぁってそういう感じがすごく好きです。今回の小説は、教師を定年退職したお祖母ちゃんが、これまでの教え子たちに手紙をだすところから始まるんだけど、血のつながらない孫や、返事のかえってきた教え子、そして返事を返さなかったけど、偶然出会う教え子とのエピソードが一つずつ絡み合っていくのです。そこに震災や病気、事故が絡んでくるから、実際に起こっていることならあまりに不幸な一面を一気に見ているような感じなんだけど、一見厄介者であった血のつながらない孫が、キーマンとなって一つの力強い物語ができていく。

 読んでて、いろいろ考えちゃいます。学校の先生の小説を書かせたらほんとにうまいと思うのです。そして、「あの頃の私なら…、でも、いまはこれでいい」みたいな言い回しがすごく沁み込むんですよね。本音と建て前が行き来しながら、生きてるんですよね。それがすごくわかるんです。だから、読んでて辛くなるし、面白くなるし。

 教え子の一人が、学校の先生になってて、事件が起こるのだが、寝る前に読んでいるつもりだったのに、そのあたりからもう寝られなくなっちゃいました。一気に読み進めてしまい、予定よりも早く読み終えました。引き込まれていくっていうのは、さすが小説のなせる業です。

 結局、題名の「めだか、太平洋を往け」というのが、物語全体を串刺しにしているように、いろいろな場面で出てくるんです。定年退職した先生が、卒業生に向けてずっと伝えてきた話がめだかの話。そして、その話が何世代もの教え子たちを繋げていくわけですから・・・。こんな先生に出会いたかったなあ、こんな先生になれたらなぁ、なんて思いながら読むのもいいし、自分の立場をどこに置くかで、見え方や感じ方が変わる小説でした。読み終えて、すごくいい時間を過ごせたと思える小説です。

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