JR上野駅公園口

小説

 2020年の全米図書賞というアメリカを代表する賞の翻訳部門にて日本の小説が選ばれたということを聞いた。さて、どんな本なのか。もちろん私は英語に翻訳された本は読めないので原書であるこの小説を手に取ったのだ。

 読んでいて思うことは、どこで場面が変わったのかがわかりにくい。場面の変化の多くの場合は、語り口調が変わったことで、時代も場所も変わっていく。おかげで中々内容が頭に入ってこないだけではなく、英訳されると、日本語のこの方言をどのように訳すのだろうと、別のことが気になるくらい。かといって、英訳された本に手を出すことはない。

 さて、戦後に福島で生活し、出稼ぎ労働者として東京へ来た主人公の、その人生とは何だったのか。長男は31歳のこれからと言うときに、突然死をし、定年を迎えて老後を過ごそうとしたところで、妻に先立たれ、孫に迷惑をかけまいと、東京に改めて単身出てきたうえで、ホームレス。その人生に天皇との関わりを絡めながら、ホームレスの厳しい実態にさらに天皇を絡める。淡々と読み進めるものの、そんなにつらい時代があったのかと思っているうちに、いやいや現在もなお、上野でホームレスたちが苦しむ姿を、少年のホームレス狩りと並べられて、山狩りという行政の対応についても書かれている。そんな最後に地震に津波。

 なんとも感想の残せない物語。読者として何を書けばよいのか…。そんなことを考えさせられる物語であった。

 これが私の2021年、最初の読書である。今年もフラフラしながら時間つぶしに読書をして、自分の思うことを書き連ねていきたい。

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