ジヴェルニーの食卓

小説

 私は美術館や美術品に興味がない。中でも絵画をみて感動したことがない。20代のころ、海外旅行に行き、有名な美術館をいくつか訪れた。しかし、美術品の前をするするとすり抜けていくばかりで、入場料を払う価値があるのか?と疑問に思ってから行くことが無くなった。

 40歳をこえて、そんな自分が情けなくもある。さて、今回は美術品や有名な画家にまつわる短編小説集である。

 横文字の名前はどうも頭に入ってこない。どの小説も、最初は何を言っているのか情景が浮かんでこない。それでも読み進めていくとパッと一つの情景が浮かび上がる。

 ん??これって絵画と同じか?なんてちょっとした発見をしたような気になり、その画家と作品をネットで調べてみる。この物語の向こうに、この絵画があるのか…いや逆かな、この絵画を見てこの物語が生まれたのかと思うと、絵が点ではなく線や立体に感じる。

 おお、初めての感覚だ。原田マハさんの小説に新しい顔を見つけた、そんな感じがする。テーマは同じでも見せ方は、手紙であり、死後であり、生活であり、回想録である。こうやって物語をいくつも創造できるのはさすがプロの仕業だと思う。

 多くの画家が最初から売れたわけではなく、それでも描きたいと思う創作意欲や、一枚の絵画を描き始めたきっかけ、先見の明などが伝わってくる。時々、眠くもなったが、それでも夢から覚めてまた小説を手に取る。こういうのがいいなぁと感じた。

 いい時間を過ごすことができた。紹介してくれた人に感謝である。

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