生きるぼくら(原田マハ)

小説

重たい本を選んじゃったかなぁ。もちろん文庫本なので重量のことではない。引きこもりでいじめかぁ…。そんなスタートではあったけど、原田マハがそのまま重たい空気では終わらない。

今回は、稲作の話…。流石、事実に忠実何だなぁって思うのです。ひとが手をかけただけ植物が育つんだよなぁと思う。でも、そこに付随する物語を作れるのが原田マハなんだよね。事実がある、その事実をみてストーリーを付け加えることができる。それはとっても幸せなことなんだろうなぁ…。昔ながらの自然農法による稲作、今はもう誰もやらない。一言でいえば効率が悪い。でも、そんな自然農法だからこそ人の助けを必要とするし、自分に向き合うことになる。

恋の物語じゃない。人が立ち直るための物語でもない。でも、希望を持つためには努力が必要だってことはひしひしと伝わる。簡単にできるように科学技術は発展してきた。だからといって僕たちが幸せになれるわけではない。努力して、汗かいて、そうしてそれが自分の自信になり、力になる。だから新し一歩が踏み出せるようになる。

今回の小説のキーワードは「梅干し」であろうか。時々に梅干しの味が変化していく。大好きだったものが大嫌いになり…そして、自分が変化することでまた大好きに変わっていく。引きこもりの少年が、母の強い思いで立ち上がり、祖母や家族を支え、多くの人からの協力を得ながら、前に進んでいく。自分と向き合いながら、イネも自分も成長していく過程で、さらに悩みを抱える学生も自分と向き合い成長していく。一本のイネが分げつして大きくなっていくのと同じように、若者の成長の連鎖を感じることができる物語であった。

ちょっとほっこりした気分で物語を閉じることができてよかった。やっぱり、原田マハは面白い。

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