迷路館の殺人 (綾辻行人)

小説

 ある人が図書館で借りてきた本を並べてあるのを見つけて、「この中でいちばんのおススメは?」と聞いたところ紹介してくれたのがこの小説。ならば、君が返した後に借りてみるね…なんて言って借りてきた本である。

 さて、読書には自分に合った物語と合わない物語がある。今回のミステリーは本格的なミステリーだった。この著者の本を初めて読んだ。さらりと単純なミステリーは好きだけど、物語の中で、これがおかしいんじゃないか、この人が犯人じゃないのか?と考えながら読むのは不得意だと気付かされた物語だった。

 この小説の面白いところは、小説の中に小説があるということだ。なんと表現すれば伝わるのか、とにかく物語が物語の中で展開されていくというか、小説本の中に小説本が登場する。私の説明ではよくわからないでしょうから、ぜひ手に取っていただきたい。その状況のスタートなので、章ごとに新しい物語なのか、それとも一連の物語なのか、はたまた、5人の作家が登場するので、それぞれの物語なのか…いろいろ考えながら読み進めた私ではあるが、最終的な執着地点は全く違うところにあったわけで、最後まで頭の中に「????」が残る小説であった。

 簡単に言えば、迷路のような館の中で、大作家に呼ばれた4人の作家がミステリーを書き始め、そして書かれた内容のように書いた本人が殺されていくという事件を題材にして、参加者の一人が小説化したという内容である。こうやってまとめておいて、一回まわって結局なに??と思ってしまう。

 小説の中の小説は一通りの解決まで進んでも、その小説にまつわる物語は続くわけで、そこでまた「???」となりながら、その後に書かれている「あとがき」やら「解説」も物語の一部なのだろうか?なんて思いながら読んでいるのはきっと私だけだろう。「物語の最初の部分のこの文章で…」みたいなミステリーを解き明かすポイントを言われても、さらさらと読み進めてきた私にはどこのことやら記憶にない。しかし、本当のミステリー好きは、赤ペン持ってポイントとなりそうなところを確認しながら読んでいるそうで、そんな読書の楽しみ方もあるのかと、この本を読んでミステリーの読み方を知ったようなものである。かといって、もう一度読んでみようとは思わない私だが…。

 そう考えてみると、家族がテレビドラマを見ているときに、食いつくように見ている姿を見て、いつも私は「洗濯物でも畳みながらみたら?」と声をかけてしまう。ドラマというのは皿を洗いながら、洗濯物をたたみながら、掃除をしながら、ご飯を食べながら、横目で見ながらなんとなくストーリーを追うというのが私のドラマとの付き合い方である。さすれば当然、その時はわかったつもりでいても、後から聞かれても全く内容が頭に残っていないのである。今回の小説を読み終えて、あとがきを読みながら「そういうことか」と一人で妙に納得をしてしまった。

 かといって、全てがそうだというわけではない。物語は寝る前に、出かける時に、メモを取らずに読む読書だと思っている。じゃぁ、目的をもって学ぶために読む本はノートとペンをもってメモを取りながら読むのだ。そんな私はやっぱり本格ミステリーには不向きなんだろうなぁと感じたためになる読書であった。

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