傲慢と善良(辻村深月)

小説

 恋愛物語というには、どろどろとし過ぎるかなぁ。でも、生きてるってこういうことなのかなぁと感じることがたくさんある。意識してないけど、振り返ってみたり、相手のことを知る中で自分のことと照らし合わせてみたり。傲慢だといえば、人の思うことや行動は傲慢なことが多い。善良とて、見方をかえれば傲慢である。

 僕は妊活はしたことがある。でも、婚活は…ない。アプリや結婚紹介とか、条件から始まる恋ってどうなんだろうと思うけど…そういう時代になったんだなぁ。いつの間にか一緒にいて、なんかのきっかけで結婚して、家庭を築いていくと思ってたけど、婚活というと条件が先に合ってそこから選んで、妥協の中で相手を選んでいく活動なのだろうか。婚活アプリで出会った二人が、彼女のストーカー話から物語が進んでいく。

 最初は彼の視点から、物語は進む。いなくなった彼女を長い時間かけながら探していくのだけど、その時間は自分と向き合う時間となる。彼女の過去を探しているようで、自分の過去と向き合っていく。そうやって彼は彼女を再確認しながら、自分と対話することで成長していく。

 そして、真ん中に彼女が居なくなってしまった理由が語られる。どっちもどっちで、お互いの未熟さであり、向き合ってこなかったことから生まれるすれ違いがそうさせた。

 後半に彼女の視点となる。もう二人は戻れないだろうと思って読み進めるけど、ここで震災復興が出てくるところがずるい。それ以前の思いをなんとなく薄めちゃうんだよね。復興に関わるって、自分を見直すきっかけの万人向けのスイッチみたいなもので、「だからなに?」とは言わせない状況を生み出すのがずるい。

 そうして二人は…。こういう恋バナを読みながら、自分の昔々の恋をしてた頃に照らし合わせているのは、架(主人公)のしていることに似てるような思いを持ちながら最後まで読むことができた。ハッピーエンド?なのかな。お互いが成長できて次の場所へ行けてよかったのだと思う。

 結構な長く深く思い恋の物語だった。

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