奇跡の人

小説

 久しぶりに読み終わってゾクゾクと心臓が高鳴る。

 すごい小説に出会ってしまった…という思いである。人を育てる、人を愛するということの先にこういう物語があるのだろうと、ページをめくるたびに残るページ数にもっと教えてほしい、その先はどうなるのか、どうやってこの物語を閉じるのか・・・ページをめくることがもったいないと思う一方で、その先を知りたくて仕方ないという思いが混ざり合うとても良い感覚である。

 この物語は、ヘレンケラーとサリバン先生の話を日本に場面を移して、見事な小説にしている。これまでに読んできた原田マハとは趣の違う小説であった。

 日本初の「無形文化財」として、津軽三味線の老女を推薦するために真冬の東北へ向かうところから始まる。なんとも読みにくいなぁと思いながら読みだしたのだが、突然物語は、弱視で将来は全盲になるであろう娘を日本初の海外留学させるシーンへ変わる。障碍を抱えながらも強く生き、女子教育に塚らを注ごうとする女性のお話かと思えば、そこから耳も聞こえず、目も見えない少女と出会いから、教育者としての試行錯誤と気づきや愛情と厳しさ、諦めない強い志を根っこにした物語が展開する。ふと、最初に出てきた津軽三味線の老女は誰だっけ?と思いながら、読み進めると、しっかり最後に答えを教えてくれる。

 私の言葉不足と説明下手できっと伝わらないと思うが、大きな感動を与えてくれるのは、半分がヘレンケラーとサリバンの事実と、その事実に物語としてのさらなる力を与えているからなのかもしれない。

 読み終わったこの感覚をどう伝えたらいいのか…。

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