さすらい猫ノアの伝説

小説

 重松清の小説には子どもに読ませたい物語と読ませたくない物語がある。時々、妙に性に執着するものがあるが、今回のは小学生に読ませたいと思う本だ。

 クラスの忘れ物を知らせるためにやってくるクロネコ。決して荷物を届けにくる宅配便ではない。最初のメッセージこそ前の学校からのメモであるが、その後は猫が何を言おうとしながら、それぞれが考えるのである。毎日の中でふと立ち止まって考える時間を与えてくれる。もしかすると自分自身にもそういう時間が必要なのかもしれない。立ち止まると見える違う景色があるのかもしれないと感じさせる。そして、子どもが言葉にせずに発する心の声が妙に自分の声と重なる。こういうのが重松だよなぁと思う。

 この物語は子ども向けの別のシリーズで納められているものを、セットにして文庫化されたものだ。一つは担任の交代から荒れゆく子どもたちを救ってくれる。そしてもう一つは転校生のほとんどこない田舎の学校で数か月過ごした転校生の物語。

 行間を読むとはこういうことなのかなぁと思うほどに、文字でない部分を想像しながら読める。自分にもこういう気持ちがあるって改めて気づかせてくれる。

 やっぱり、子どもに薦めたいと思う。

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