小説 言の葉の庭

小説

 こういう小説久しぶりに読んだなぁ。図書館で春に向けて読む本を探して手に取った本のうちの一冊。甘酸っぱい恋がバトンのようにつながっていく。万葉集を区切りにしながら。吸い込まれるように一日で読み切ってしまった。

 もともとはアニメだったものを小説に書きだしたそうだ。アニメーション監督が言葉の力を見事に使いこなしたわけだ。一人のというよりも一つの家族の周りにある恋が時に切なく、そして共感をしながら進んでいく。あぁ、物語だけど、想像して、入り込む自分の思い。まさに意図したように踊らされながら読み進める感じだ。

 もっと大人になりたいと思った中学生が二十歳になったとき、もっと大人の女性を笑顔にできる。年上の女性にひかれて背伸びする男の子の気持ちがすごく気持ちを高ぶらせる。

 そして、読む中で思う視点に、親が良くも悪くも子どもに与える影響である。早くに子どもを産んだ母親がそれでも女性として輝きたいと背伸びするように集めた靴が子どもの未来を作ることになっていくことが、共感できるけれども、どこかで怖い。自分が意図せずにしていることがいつか子どもの未来に影響を与えていくんだと物語と現実の真ん中で考えてしまう。

 小説を読みながら、ふと恋する自分に気づく。想像と現実の中間をこういう物語は与えてくれる。早く答えを知りたいと思うミステリーとは違い、早く君に会いたいと思って読み進めることになる。その君は物語の中の一人なのか、自分の人生を振り返りながら考えてしまう。

 この状況、どっかで…は他の小説なのか、現実なのか…すっかり自分も登場人物の一人になりそうな勢いだ。何も変わらずにかつての旧友に「なんかあったら俺だけには相談しろよ」と声をかけて「キモイ」と言われた男子校に通う彼・・・そんな彼でさえ、この物語に登場していることをうらやましく思えた。

 なんかとっても若返る、あぁなんかこの世界観にすっかりハマってしまった。春ですね。

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