感染宣告 エイズウィルスに人生を変えられた人々の物語(石井光太)

ノンフィクション

この人の本が好きだという人のおすすめということで読んでみた。小説ではなく、ドキュメンタリーである。HIVに感染した人たちのそれぞれの人生に向き合った本である。著者がインタビューしたものを書き起こしていった物なので、インタビューに答えてくれる人たちの物語というか人生のかけらがここに記されている。

我々の世代にとってエイズというのは不治の病であり、いつ発病するか分らない、性感染症であった。日本で最初にエイズが問題となったのは薬害からである。その頃のエイズに対する偏見やわからない病気であるが故の迫害はコロナの初期に似ているようで、性感染症というとこで大きく違う。

今では、糖尿病と同じで治らないけれども適切な治療をしていくことで、人生を全うできる病である。ところが、世間ではそうは思われない。性感染症という側面からの偏見はとても大きな病気なのだ。さて、そんなエイズであるがエイズになる前にHIV感染者となる。症状もほとんどなく自分も分らないまま、それぞれのきっかけで病気と向き合うことになる。

乗り越えていく人がいれば、それを苦にして自殺する人や薬物に落ちていく人・・・これが現実なのかという物語(あえてここでは物語というが)がいくつも書かれ、本人だけではなく家族の視点からも書かれている。人間誰しも順風満帆な人生を送っているわけではない。一時の迷いであったり、性的嗜好の違いから苦しみ自分を蔑み自暴自棄のような性生活を送ることもあるであろう。そうして感染してしまった病とその後の人生をかけて向き合っていく姿のリアルと何となく遠くの世界の話だという感覚の間でどんどん読み進めたくなる本でった。

薦めてくれた人に読み終えたことを伝えたいと思う一冊であった。

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