発達障害「グレーゾーン」その正しい理解と克服法 (岡田尊司)

心理学

 なかなか読書をする時間がない。課題のような読まされる読書はやはり楽しくない。さて、久しぶりに岡田先生の本を見つけたので読んでみた。岡田先生の著書はとても分かりやすくまとめられていてすらすらと読めるのでありがたい。さすがは小説家でもあるだけのことはある。

 さて、巷では発達障害についてワイドショーや新聞でもよく報じられるようになり、多くの人がその特性や困難さを見聞きする時代になった。かつては変わった子だった子たちに病名がつくわけである。しかし、その病名がついたからと言って「発達障がいだから」となってしまっては意味がない。昔は変わった子だなといっても、受け入れられる風土があったと思うが、親が変わったのか社会が変わったのか、学校が変わったのか…。どちらにせよ、診断がついてからの対応が重要であるし、診断がつかなかったからと言って、本人が困っているのであれば、困っていることに対して対応してあげる必要がある。「グレーゾーン」というのは本当に難しい問題だと思いながら読み進めることができた。

「グレーゾーン」なので障害ではありません。この一言に親はどう思うのだろうか。困っている状況は変わらないし、障害ではないといわれて安心できるわけではない。逆に「発達障害です」と言われても全く同じである。ある基準(この基準もコロコロと変わる)にいくつか該当したら診断されるというのでは、一つだけ該当していて困っていても障害ではないとなるのだ。やっぱり変な話だ。そして、障害であろうがグレーゾーンであろうが、社会の中で成功している人たちはたくさんいる。そういった人たちに共通するのは弱みよりも強みを大事にしてきたことではないだろうか。この本の中でも世界的な有名人が何名も紹介されている。

 日本の教育において「和を以て貴しとなす」ということが重んじられている。本来ならばどんな子供であれ、受け入れられて共同生活を送ることが大切だとされなければいけないはずだが、現在の学校では、「和を保てない子」が、その特性から叱咤され、非難されるような状況ではないだろうか。できているところや可能性ではなく、できないところにばかり注目をしてしまう。本書の最後の結論は、子供たち一人一人に自信を持たせることで特性を強みに変えていく可能性があるということだ。そして、発達障害を定義している診断名も10年もたてばがらりと変わるとされている。なので、診断名を覚えたり、そこに該当するかどうかということよりも、そういった子供たちがどんなことに困っているのかを考えながら対応していく必要がある。

 発達障害の子供がいることで、大人が困るから大人の都合に合わない子に診断をというのでは意味がない。診断があろうがなかろうが、それを特性ととらえて教育できるようなゆとりを持った教育が必要である。そのためにはやはり学校の持つ社会制度を大きく変えていく必要がるだろうなぁと感じながら読み進めた。

 いろいろなケースを紹介しながら、発達障害と特性、はたまた人間の多様性のグラデーションを考えながら学ぶことができた本であった。

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