最新の脳研究でわかった!自立するこの育て方 (工藤勇一・青砥瑞人)

How to

 工藤勇一先生は現在は横浜創英中学校・高等学校の校長で元は公立中学校で学校改革を進めて、定期テストなどをなくして日本の教育の変化を生み出した方である。青砥瑞人先生は、日本の高校を中退して海外に行き、脳神経科学を学び多くの分野に応用して活躍されている方。この二人が偶然か必然かであったわけで、その出会いが新しい取り組みに活かされて、一つの公立学校を大きく変えていったことをこの本で知った。読んでるだけ、聞いてるだけではなく、行動に移すことの大切さや勇気がとても重要であることを考えさせられる。一つ一つの出会いが自分を周りを社会を変えることにつながると思うと、毎日の生活が充実するようにも感じる。

 教員というのは悩むものである。そりゃ同じことをしているようで、毎日相手をしている生徒たちが変わるし、前回うまくいったことが対象が変わればうまくいかないならわかるが、同じ対象者であってもうまくいくこともうまくいかないこともある。なので、やっぱり悩むのである。そんな時に、どうしたらよかったのかなぁ?と反省する振り返ることが多いわけだが、工藤先生も困った生徒がいたら3つの言葉かけを提案されていてる。「どうしたの?」「君はどうしたいの?」「何を支援してほしいの?」この三つの言葉で生徒を生徒の世界に戻してあげることができる。多くの学校では、生徒たちは大人の都合の世界に生きている。先生に都合が悪いことで怒られる、先生がレールを決めてそこに乗っていないと怒られる。そのレールに乗っていればよい人生が約束された時代があったかもしれない、そして先生たちの多くは、そのレールに素直に乗ってきたのかもしれない。しかし、本当に大切なことは、生徒が自分の人生を生きることである。生徒が当事者とならなければこれからの社会で正解のない答えを探していくことはできない。なので、当事者に戻すための言葉かけが、「どうしたの?」「君はどうしたいの?」「何を支援してほしいの?」なのである。できないことは支援を頼むことが必要で、教員ができないだろうからといって手を出していてはいつまでたっても生徒は成長しないのだ。

 そして、何よりも大切なことは「安心感」である。心理的安全性を確保してあげることである。そういう場所が子供達には少ないのかもしれない。我々大人でも働く環境のほとんどは人間関係である。人間関係がうまくいっているところでは、ミスしてもフォロしあえるし、人間関係がうまくいっていなければ相談すらもできない。間違いをしたら怒られるのであれば、間違えを報告できなくなってしまう。学校というところは知らないことやできないことをできるようになっていく場所である。間違えながらうまくいく方法を探していくうえで、安心して間違えることができる、失敗したことを受け入れる環境こそが必要となる。自分が受け入れられていると感じてこそ、初めて大人たちからの3つの言葉がけに反応できるのだ。

 こうやって心理的な安全性が確保され、当事者として自分の人生を生きることができるようになれば、生徒は自分で考えて行動し、必要な助けを自分で探すことができる。そんな時に教師たちがサポート役として生徒たちからの言葉を待っていればいいのだ。では、子供たちは具体的にどうやって成長していくのか。それは周りにいる仲間や教師の中から理想とする人をモデルにして行動することで、自分を成長させていく。自分と他者の違いに自分で気が付けるようになる。そのためには自分だけではなく、他人だけではなく、全体を俯瞰してみることがひつようとなる。これがメタ認知能力というわけだ。失敗したときにうまくいっている人との違いを考える。悩んだときに全体の中での自分の居場所を考える。視点をかえるだけで見えるものは大きくなる。これは大人も子供もおなじである。そうやってモデルとなる人がたくさんいるのが学校なのだ。

 こういうことを脳科学の視点から理論的な裏打ちをしながら改革をしてきたからこそ、経験と理論が一つになり学校全体が変わってきたのだろう。そして、生徒に対してだけではなく大人たちが教師たちが成長するために、大人にとっても心理的な安全性を確保しようとしたことも大きい。学校を変えようとしたときに生徒以上に反発をするのは教員である。教員は学校での成功体験をたくさん持って教員になっている。根拠なき自信がその人を変えることを拒む。そして、多くの学校改革が教員の手によってつぶされていくのが世の中である。そんな中で教師たちにも心理的な安全性やモデリングをさせて成長させてきたからこそうまくいったんだなぁと感じさせる本であった。

 多くのことを学べる本であった。そして大事になことはやっぱり理論知ったら実践だと思う。

コメント

タイトルとURLをコピーしました