絶対貧困 -世界リアル貧困学講義-(石井光太著)

ノンフィクション

世界の貧困問題を著者なりにコミカルにというか悲惨だと訴えるだけではなく、その国や民族の置かれた状況とともに書かれている。

貧困地域の問題は悲惨であるが、そこで生きている人たちにはそれぞれに理由があり、そして、生きていくためには仕方なくやらなくてはならないこともある。それが物乞いであり売春であり盗みや薬物なのだろう。なんとなく自分とは別世界のことのように思うが考えてみれば、たまたま平和な日本という環境に生まれたから今の自分がある。教育も倫理観も環境があってこそだと思う。それがないところで、どんなに努力しようとしても、生きていくことを優先せざるを得ない。物乞いには物乞いとしてのスキルがあり、売春婦にもそれぞれのヒエラルキーがあるのもよくわかる。しかし、読んだから、なんとなく事情がわかったからと言って何かができるわけでもない。結局は遠くの国のできごとだと思うばかりで申し訳無さも感じる。

アジアの国々の状況をある視点からみて、なんて私達は幸せだろうと思うわけでもなく、私達は私達でそれぞれに自分たちの生活を守るために日々たたかっている。貧困問題に答えはないから自分が思ったことをしろという著者の最後の締めくくりはその通りだと思う。

大学の講義のように15回に渡る貧困の視点から国際社会をみてきたないようであるが、そういう人もいるのかと、そういう国もあるのかと、別に日本は違うというわけでもなく、日本にだってたくさんの伏せておきたい事実があり、それは今もなお行われているのだ。今回の本の中に取り上げられた内容は決して他国の話ばかりはないであろうと思いながら本を閉じた。

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