おくることば(重松清) 

小説

 重松清の小説が好きで、ネット新しい文庫本を見つけて購入した。読んでみると、小説ではない。早稲田大学で重松ゼミを開いているって?特任教授??頭にいくつも「?」を浮かべながら読み進めていく。

 2016年から早稲田大学で教師をしているそうだ。そして、この本に登場するのは2021年からの数年のコロナ禍に書かれたゼミ誌の内容である。重松清が早稲田で教師をやっているのかぁ…いいなぁ、そういうゼミなら僕も入ってみたいと思いながら読み始めると、41人目のゼミ生に認定される。でも、小説が読みたかったんだよなぁ。ゼミ誌を出版しても売れるとなると、なんかずるいと感じてしまう。だから小説が読みたかった…と思ってしまう。 

 重松作品は物語だから妙に細かいところをクローズアップしたり、心の声が文字になっていても「そんな気持ちもあるよなぁ」と思いながら読めるのだ。ここ数年の暗い社会の出来事が挙げられた内容は物語ではない。一つ一つは短い文章なだけに、本を閉じて考える時間ができてしまう。世の中の出来事にも重松の心の声が文字になって表現される。これは結構、重たいことだ。 

 そうこうしていると次は短編小説の登場である。そして、これも「コロナ」にまつわる物語。この気持ちわかる…というのが実感と重なるのだ。マスクをする人がかなり少なくなった今、振り返ってみて、あの数年は何だったんだろうと思う。そして、自分じゃない誰かにうつすんじゃないだろうかという、あの恐怖は誰もが一度は感じたはずだ。それが物語でよみがえる…。やっぱり、読み進まない。 

 歌の歌詞が出てきて、短編がもう一つと続く。なんとなくここ数年書いたのをポイっと一つの箱に放り込むみたいな文庫本だった。やっぱり僕の読みたかった重松小説ではない。そういいながら重松ゼミの学生がうらやましくて仕方ない。重松清の小説は中学入試でよく使われる。そんな中学入試で重松作品の問題を解いた子たちが早稲田で重松ゼミに入ったりしているのかな?そんなことを思いながら、今から受験しても任期切れかなぁと夢のようなことを考えてしまう自分がいる。 

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